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  • ペットの臭いが壁に染みつく本当の理由

    去年の秋、堺市内にある自分のマンションの一室で、退去立会いをしたときのことだ。

    「猫を飼っていた部屋です」と不動産屋から聞いていた。ドアを開けた瞬間、モワッと来た。あの独特の、鼻の奥に引っかかるような臭い。

    問題は、その部屋にもう猫がいないことだった。1ヶ月前に退去している。換気もしていた。なのにまだそこにいる。

    「消臭スプレーを何度もかけた」とオーナーから聞いていたが、臭いは消えていなかった。私も昔、同じことをやっていた。スプレーして、しばらくは消えたように感じる。でも翌朝、また戻っている。あれは何なのか、当時は本当に謎だった。

    正直に言うと、ずっと「臭いが壁に染みた」という表現を使ってきたけれど、その「染みる」という仕組みを、自分はちゃんと理解していなかった。

    ペットの臭い成分は、気体として空気中を漂っている。アンモニア、アミン類、揮発性の有機化合物。要するに、小さな臭い分子がふわふわと部屋中を移動しているわけだ。

    で、これが壁にぶつかる。

    壁というのは、ただそこに立っているだけじゃない。特に日本の住宅でよく使われているクロスや、その下の石膏ボードは、湿気を吸ったり吐いたりする性質を持っている。呼吸している、と言われる。

    呼吸しているということは、臭い分子も一緒に吸い込む。

    料理の例で考えてほしい。焼き魚をした翌日、キッチンの壁をちょっと濡れた手で触ると、なんとなく脂っぽい感触があることがある。あれは魚の油分が少しずつ壁に入り込んでいるからだ。臭い分子でも同じことが起きている。空気中を漂いながら、少しずつ、毎日少しずつ、壁の内側に取り込まれていく。

    表面に乗っているうちなら、まだ消せる。でも「内側に入ってしまった」臭いは、表面に消臭剤をかけても届かない。

    スプレーして一瞬消えたように感じるのは、表面の臭いだけを一時的に抑えているからだ。内側に入った分子は、気温が上がったり湿度が変わったりするタイミングで、じわじわ外に出てくる。「よし、これで消えた」と思っていたのに翌朝また戻っている、あの現象はこれだ。

    私が長年「なぜ臭いが戻るのか」という疑問を持ち続けてきたのも、このメカニズムを知らなかったからだ。消し方を間違えていたのではなく、そもそも「何を消すか」の理解が間違えていた。

    臭いが表面にあるのか、壁の内部まで入っているのかによって、やるべきことはまったく変わる。

    ペットを飼っている部屋の壁は、日々その積み重ねの中にある。猫がいなくなっても、臭いが残るのはそういう理由だ。

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    この研究について情報交換・ご連絡は keshisaru-g@keshisaru.com まで。

  • ペットの臭いが壁に染みつく本当の理由

    去年の秋、北区で管理している物件に入居者が退去した部屋があった。猫を2匹飼っていた人で、退去後に鍵を受け取って中に入った瞬間、思わず後ずさりした。

    ドアを開けた瞬間に来る、あの壁全体から押し寄せてくるような感覚。空気というより、部屋そのものが臭いを持っているような感じ。換気してもしばらく消えない。

    最初、私はこれを「臭いが染みついた」と表現していた。染みついた、というのはつまり表面に汚れが付着しているイメージで、だから最初は壁を拭けば取れると思っていた。クロスを拭いて、消臭スプレーをかけて、それでおわり。そういう処理を何度もしてきた。

    でも消えない。数日経つと戻ってくる。

    これが10年以上、ずっと不思議だった。

    調べていくうちに、どうやら私の認識が根本的にズレていたことがわかってきた。「染みついた」というのは表現として間違っていないんだけど、中身が全然違う。臭いの原因になっている物質は、壁の表面だけにいるわけじゃない。

    ペットの尿や皮脂には、アンモニアや脂肪酸など揮発しやすい成分が含まれている。要するに、臭いの元になる物質が蒸発して空気中に漂い続けているということだ。で、その物質の一部は、壁の表面から内側へ、少しずつ浸透していく。クロスの下にある石膏ボード、その隙間、場合によっては下地の木材にまで届いている。

    料理に例えると伝わりやすいかもしれない。フライパンで毎日同じ料理を作り続けると、洗っても洗っても油が抜けきらなくなってくる。あれは鉄やアルミの表面に油分が入り込んでいるからで、表面を拭くだけでは取れない。壁も似たようなことが起きている、と私は今では理解している。

    だから表面を拭いてスプレーをかけても、数日後に臭いが戻ってくる。内側から揮発が続いているから。

    もうひとつ、これは最近知って「そうか」と思ったのだが、猫や犬が同じ場所でマーキングや排泄を繰り返すと、その場所への浸透量が積み重なっていく。1回2回ではなく、何ヶ月も何年も。そうなると、表面の問題どころじゃなくなる。

    「うちの壁ってそうなってたの?」と思うかどうかは、ペットを飼っている年数と、掃除のやり方によると思う。こまめに拭いていればそうはならないのかもしれない。でも多くの場合、気づいたときにはもう染みていた、ということになっている。

    私自身、あの部屋で何度も失敗した。表面しか見ていなかった。

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