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  • タバコのヤニは壁に「食い込んで」いた

    マンションオーナーの河合です。

    退去後の部屋に入ったとき、思わず言葉を失ったことがある。壁が黄色い。いや、「黄色くなっている」じゃなくて、もう壁そのものが黄色い、という感じ。雑巾で拭いたら一瞬きれいになる。でも乾くとまた浮き出てくる。まるで壁が汗をかいているみたいに。

    あのとき私は「汚れが残っている」と思っていた。でも、違った。

    ヤニは「乗っている」のではなく「染みている」

    タバコの煙には、ニコチンやタール(=煙の中に含まれる茶色い粘着物質のこと)が含まれている。これが空気中を漂って、壁の表面にたどり着く。

    ここで大事なのが、クロス(=壁紙のこと)の構造だ。一般的な壁紙は、表面がビニールでできているように見えて、実は無数の小さな凹凸がある。拡大して見ると、まるでスポンジのような微細な穴だらけだ。髪の毛の太さを100とすると、その穴の大きさは1以下、というレベルの話である。

    タバコの粒子(=煙の中の小さなつぶ)は、その穴にぴたりとはまり込む。乗っているのではなく、入り込んでいるのだ。

    なぜ拭いても取れないのか

    ここにもう一つの問題がある。タールは「油に溶ける性質」を持っている。水拭きだと、表面を少し流すだけで、穴の奥に入り込んだ成分はびくともしない。

    さらに時間が経つと、ヤニは壁紙の奥の「下地(=壁紙を貼り付けている接着層や石膏ボードのこと)」にまで到達する。こうなるともう表面を拭くだけでは追いつかない。壁紙を剥がしても、下から黄色いシミが出てくる。あの光景の正体が、これだったのだ。

    温度が上がると「また出てくる」

    もう一つ、知って驚いたことがある。一度染み込んだヤニは、温度が上がると再び表面に滲み出てくる性質がある。夏場に部屋が暑くなったとき、または暖房をつけたとき、「また黄色くなってきた」と感じた経験はないだろうか。あれは気のせいではない。壁が温められて、奥に閉じ込められていたヤニが外に出てきているのだ。

    鍋の中の油が冷えると固まり、温めると溶けて広がる。それと同じことが、壁の中でも起きている。

    「封印できる」とはどういうことか

    では、どうすれば壁からヤニが出てこなくなるのか。拭く、削る、塗る。いろんなアプローチがある。しかしどれも、ヤニの「染み込む性質」と「温度で動く性質」を無視しては意味がない。

    封印、という言葉がある。汚れを「取り除く」のではなく、「出てこられなくする」発想だ。私がこのラボを立ち上げたのは、この発想に出会ったからだった。

    → ヤニが壁の中でどう動くのか、封印がなぜ機能するのか。詳しいメカニズムは研究記事で解説しています。