封じ込めるとはどういうことか——壁の中で何が起きているのか

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去年の夏、天王寺のマンションで原状回復の立ち会いをした。退去から3週間経っていた部屋だった。

ドアを開けた瞬間、モワッとくる。

クロスは張り替え済み。床も新しい。なのにニオイだけが残っている。業者さんが「施工はちゃんとやりましたよ」と困った顔をして言う。そこで私も「そうですね」と答えながら、心の中では「じゃあなんで臭いんだ」とずっと思っていた。

あれは10年以上前の話だ。当時の私は「封じ込め=新しい層で覆う」だと思い込んでいた。クロスを剥がして、新しいのを貼れば解決する。そういう理解だった。今から思えば、完全に間違えていた。

「封じ込める」とは何か、と改めて考えると、これがけっこう深い話になる。

料理で言うと、においの強い食材をラップで包むとする。ラップが薄ければ、においは少しずつ透過する。完全に封じ込めるには、においの分子がそのラップの隙間を通り抜けられない状態を作らないといけない。材質と厚みと、密着度。この三つが揃って初めて「封止」になる。

壁も、同じ話だ。

臭気の発生源があったとして、その上からクロスを貼っても、クロスという素材にはそもそも透過性がある。特に布クロスは論外として、ビニールクロスでさえ長期的には分子レベルの移動が起きる。要するに、「見た目を覆うこと」と「ニオイを止めること」はまったく別の話なのだ。

じゃあ何が本物の「封止」なのか。

物理的封止という考え方がある。発生源そのものを、においの分子が通過できない素材で物理的に閉じ込める。ここが概念として面白くて、「ニオイを消す」のではなく「ニオイを出さなくする」という発想の転換がある。消臭と封止は、そもそも目的が違う。

以前の私はここを混同していた。消臭剤を吹いて、クロスを貼れば「対処した」と思っていた。でも発生源が壁の内側にある限り、それは蓋をしただけで、しかも蓋の素材がニオイを止められていない状態だった。当然、しばらくすれば戻る。

「なんで戻るんだ」と当時は業者のせいにしていた部分もある。正直に書く。今なら分かる。戻るのは当たり前だったのだ。

壁の内側で何が起きているか、を考えずに「表面だけ綺麗にした」状態では、封止にならない。そういう現場を、私はオーナーとして何度も経験してきた。そしてその経験が、今ケシサルJapan株式会社でやっている研究の出発点になっている。

物理的封止の具体的なメカニズムと、素材の選び方については、別の研究記事に書いてある。

→ もっと詳しく知りたい人は研究記事へ

この研究について情報交換・ご連絡は keshisaru-g@keshisaru.com まで。

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